漆の扱い方。
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漆の扱い方
 漆について
漆は英語で「ジャパン」といわれ、古くは縄文時代から使われてきた天然素材です。
いつのまにか「漆器」は高級品、扱いにくいものとしてイメージがついてしまいましたが、もともと漆は接着剤であり、塗装剤であり、保護材の役目を果たしてきた頑丈なものなのです。
ほんの少しの習慣的な手入れをすれば、陶器やガラスと比べて扱い方が難しいということはまったくありません。
漆に関してほんの少しの興味や知識を持つことで、漆器は末永く、気軽に使うことができるということが分かると思います。

我々はモノの性質を知ることを避けるようになり、いつのまにかモノに支配されて生きてきました。漆器に関してもその性質を知ることでより身近に気軽にお使いいただけるものだと感じることができると思います。
 漆器は使えば使うほど魅力が増します。
  漆は天然素材です。漆の主成分はウルシオールという物質からなり、酸化酵素ラッカーゼとの反応で塗膜を作ります。漆が乾燥すると、酵素が高分子を作り、漆は一旦固まると、酸、アルカリ、アルコール等の薬品類や、高熱にも耐える強靭な塗膜を作るのです。
塗りたての漆器は光沢がなく重たい色なのですが、だんだんと透き通るような艶が出てきます。
すり減ることで綺麗になるものは天然素材だからこそ。たとえば愛着を持って40年使った漆器は美しい木目がうきあがってきます。一番綺麗な状態が最初だけという科学塗料製品とはまったく違います。
 
 漆はどこで採れるの?
  漆は漆の木から採取されます。採取は6月〜11月に行われ、1本の木からコップ1杯少々しかとれません。現在、漆のほとんどは中国など海外から輸入されたものですが、日本の漆にはウルシーオールが最も多く含まれているため最も質が良いとされています。  
 漆器に使われる天然木
  産地によって違いますが、ヒノキ、ケヤキ、トチ、ホオ、サクラ、ブナなどが使われます。天然木は熱伝導率が低いので、断熱、保温効果があり温かさや冷たさを持続してくれます。  
 ひとつのお椀ができるまでの時間
  木地作りから始まり、下塗り、中塗り、上塗りと、各塗り行程の間にも研いでは塗りを繰り返し、装飾も加えるとひとつのお椀が完成するするまでに半年から1年の時間がかかります。原木からの事を考えると、木を乾燥させる期間を含めて4〜5年かかっていることになります。  
 漆器作りに関わる職人達とその技
  基本的に漆器づくりは分業化されており、各行程にそれぞれ専門の職人達がいます。  
1.木地師
荒削りの木地を1年間乾燥させ、ロクロを使って木地を挽いていきます。お椀を作る木地師のことを椀木地師と呼び、その他木地の用途に応じて指物木地師、朴木地師、曲物木地師などがいます。
2.下地職人 生漆を塗る木地固め、補強のための布着せ、布着せ後の惣身地付、そして三回の下地付けとその間の研ぎで木地を頑丈にしていきます。  
3.上塗職人
中塗りを経て、上塗りをします。一切のホコリが付着しないよう特別な上塗部屋で作業を行います。  
4.加飾職人 蒔絵や沈金、螺鈿といった技法で装飾を施していきます。  
 価格のはなし
漆器の価格帯はピンからキリまでで、お椀にしても数百円のものから数十万円のものまであります。しかもそれらが、同じ「漆器」として売られているのが現状です。
ケヤキやブナ、トチなどの天然木材を素地に使うためにはその素材の価格以外にも、長い年月をかけて乾燥させなくてはなりませんし、手作業により大量生産もできないのでそれだけ価格も高くなります。逆に、プラスチックや圧縮材を使ったものの場合、短期間で大量生産もできるのでそれだけ安くなります。
同じく漆の代わりに化学塗料を使った漆器に関しても同じですが、漆本来の味わいは出ません。
使っている素地と製造方法、塗料の質と塗り方、それぞれの手間(しっかりするか、手間を省くか)に応じて自然に価格は変わってきます。
ただし、プラスティック製品が悪いとは決して言えず、どちらにしてもお客様が納得してご購入いただけるよう、商品に関してできるだけの説明は必要だと思います。ただ目安として 少し乱暴かもしれませんが、1年=1,000円という言葉を聞いたことがあります。1万円のものは10年もつし、3千円のものは3年しかもたないという意味です。
1万円以上の漆器が10年間、生活を豊かな気分にさせてくれるのであれば決して高いお買い物ではないとも考えられますし、要するに使う側の考え方なのです。
 モノを大切にするための習慣 漆器のお手入れ
  たとえばクリスタルのガラスは別で洗う注意をしたり、お気に入りの革製品は日頃からお手入れに気をつかうように、ひとつの小さな習慣ごとを増やすだけで良いのです。皮製品のように専用のクリームで毎日磨くわけでもありません。ご使用後、以下の事を習慣づければ良いだけなのです。
1.食べ終わったら、漆器だけ先に洗ってしまう。そうすると汚れもこびりつきにくく、楽に洗えます。
2.汚れが落ちにくい場合、少しの間だけ漆器のなかにぬるま湯をためておいてから洗います。
3.やわらかいスポンジを使い、洗剤を使う場合ぬるま湯で薄めたものを使う。
4.そのあと柔らかい布で拭きます。
 
 気を付けること
  ・食器洗い機等はご使用しないでください。(変色、変形の原因になります)
・長時間水やお湯に浸けないでください。(表面の剥がれや変色、変形の原因になります)
・研磨剤、クレンザー、固いナイロン製の布、たわしは使わないで下さい。(変色、擦り傷の原因になります)
・電子レンジ、オーブンは、使用しないでください。
・沸騰仕立てのお湯等、極端に熱いものを入れたり浸けたりしないで下さい。(変色する場合があります)
・陶磁器などと一緒に洗わないようにしましょう。漆が頑丈ですが、ぶつければへこんだり、こすれば傷がつきます。
 
 保管方法
  汁椀など日常お使いになるものは食器棚に入れておけば十分です。重ねて収納する場合は、漆器と漆器の間にティッシュや柔らかい布を挟んでおくと良いでしょう。また、一年に数回しか使わない漆器は、使用後十分に汚れを取り自然乾燥ののち布でふき、元の箱に納めて乾燥しすぎない棚に保管してください。漆器に食べかすが残っていたり、湿度が極端に多い所に保管するとカビが発生するおそれがありますのでお気をつけ下さい。また、乾燥が激しい場所に保管すると割れが発生するおそれがあります。  
  参考文献「ほんものの漆器」とんぼの本 新潮社  
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